ソウル・メイト
私は、夫が持ってきた離婚届に署名をした。
夫はすでに署名を済ませていた。
後はこれを役所に提出すれば、私たちの結婚生活は終わる。
この紙切れ1枚だけで、7年間の結婚生活の歴史は、幕を閉じる―――。

離婚届は、夫が提出してくれるそうだ。
でも・・もうどうでもいい。

「じゃあ、俺行く」
「あ、ちょっと待って。これ」と私は言いながら、夫に小さなクマのぬいぐるみを渡した。

「これ、千鶴のお気に入りなの。寝る時いつも一緒だったから」
「あぁこれか。そう言えばクマがどうとかって、あの子言ってたな」
「肌着やお洋服の替えは持った?」
「十分だ」
「靴もある?」
「あるよ」
「あの子に・・千鶴に十分な食事をさせてください。それから、季節の変わり目だから、風邪とか引かせないように・・」
「ああ。それじゃ」

2・3歩行った夫が、私の方をふり向いた。
そして、「落ち着いたら千鶴に会わせる。約束だ」と言って、今度はスタスタと歩いて行った。

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