ソウル・メイト
確かにこの家は小ぢんまりとしているものの、掃除機をかけてみると、私と娘の千鶴が暮らしているアパートよりも広いことが分かった。

うちは寝室が1つしかないので、千鶴と一緒に使っている。
あの人と別れる前に住んでいたマンションだったら、千鶴の部屋はあった。でもあの子は、自分の部屋が欲しいと、一度も言ったことがない。
あの人のことも・・・。
今のアパートに引っ越してすぐの頃は、「パパは帰ってくる?」と何度か私に聞いてきたけど、今は全然。「パパ」という言葉すら、千鶴の口から出てこなくなった。

それだけ、千鶴にとっては、母親である私との二人暮らしが、今の暮らしとして当たり前に馴染んでいるのだろうけど、本当はパパに会えなくて寂しいと思っているのかもしれない。
でも千鶴は私に、「パパに会いたい」とは言わない。
自分の父親が、母親ではない女と一緒に暮らしていると、幼心なりに理解しているのだろう。
放っておかれたことで、自分がそこに入れないのだということも―――。

茶碗を洗っている私の手に、思わず力が入った。

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