マ王の花嫁 
不意にライオネル王が、私の方へ手を伸ばしてきた。
なす術もない私は、ただ首を竦めて両目をつぶる事しかできない!

あぁ!ここで私は殺されるんだ・・・!

「目を開けろ」
「・・・え」

低く落ち着いた、ライオネル王のいつもの声音に安堵した私が目を開けると、目の前には真摯な面持ちをしている王の顔があった。

ライオネル王は、「俺が怖いか?マイ・ディア」と私に聞きながら、止めていた手を伸ばして、そっと私の頬に置いた。
私は目を開けたまま、そして王から視線を逸らさずに、王の手を頬に受け止める。

大柄な体に繊細な動き。
そこには相手に対する気遣いがある。
たとえライオネル王が「魔王」と呼ばれていても、安易に人を殺すような御方ではない。

いつの間にか私の中に、王に対する信頼感が芽生えていた。

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