マ王の花嫁 
何かをふり切るようなその仕草のおかげで、私たちの間に出来ていた空気が、悪い方向に変わったような気がする。
何となく近寄りがたい雰囲気を感じた私は、ライオネル王の一歩後ろをついて行くように歩いた。

「俺が幼少の頃、領土をめぐる争いが世界中で繰り広げられていた」
「え?あぁ・・・確か20年程前まではそうでしたね」

この人は一体、何を言いたいのだろう。
王の低い声音は相変わらず落ち着いているけど、今はどうしても恐怖を感じてしまう。

「大戦は20年前に終わったが、その後もこの辺りでは、まだ小競り合いが続いていた。そういう理由(わけ)で、俺は幼少の頃から心身を鍛えてきた。おかげで俺の感覚は今でも鋭敏だ」

そう言ったライオネル王がクルッと私の方をふり向いたので、余計驚いた私は、胸元に両手を置いて、ハッと息を呑んだ。

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