マ王の花嫁 
「その通り。それに結局のところ、術師にとっての“お気に入り”のみが術者になれる、というのが現状でしょう?だから術師・術者という関係を廃止し、代わりに術師レベルの知識を持つ者が、学びたいと思う者に、薬草の効能から、実際薬を作れるようになるまで、アカデミーで教える。十分な知識と技術を会得すれば、薬剤師や医者として、その知識と技術を地域に活かしたり、今度は自分が先生となって、アカデミーで教える」
「なるほど。理にかなったシステムだと思います」
「何も僕は、全国民が薬草の効能や、医療技術を身につけるべきだと言っているんじゃない。だが、多少なりとも知っておくこと、例えば、モルフィーネは神経を麻痺する作用があるため、怪我などの痛み止めに利用できるが、過剰摂取すれば死に至る、とか、ベラドナ自体は毒薬とされているが、50分の1に希釈した液は点眼薬に―――もちろん良薬として―――使える、といったことを知る者が一人でも多ければ、いつかどこかで、自分自身か、誰かの役に立つかもしれない。その想いがライオネルと僕にはあったから、アカデミーを開校しようとライオネルに言われた時、僕は賛同したんだ。最初の数年は、近隣諸国からも強い風当たりを受けましたよ。前例のない、世界初のシステムを発動させたんですからね。でも今では、疾患の手術ができる医者(ドクター)を育成・輩出できるまでにアカデミーは成長しています。半年後には、アカデミー2校目が開校するし、隣国のクリーグンからも、アカデミー開校のオファーが来ています」
「そうでしたか」

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