マ王の花嫁 
・・・ライオネル王の、仕事に打ち込むあんな・・ひたむきな姿を間近で見ると、またしても気持ちが揺らぐ。
というか、王を殺める事などとてもできないと、すでに私はくじけているのだけど・・・。
湯浴みをサッサと終わらせたし。早く寝よう。
今日はもう、ライオネル王を殺す、といった事は、全く考えないで・・・。

私は意を決して、続き部屋のドアノブを回した。
・・・けど、またしてもドアは開かない。

その時、「ダメだ、ディア」という低く安定したライオネル王の声が、扉の向こうから聞こえた。

「な・・・え!?」
「おまえに殺される隙は与えていないが、おまえが偽者だと分かっている以上、おまえと寝るつもりはない」
「それは、つまり・・・?」
「疑惑が晴れるまで、寝室は別だ」

そうライオネル王から言われて、ドアノブを握っていた私の手が、カクンと揺れた。
それは当たっているのだけれど、改めて王の口から疑われていると言われた事が、ショックで・・・それ以上に悲しいのは、何故だろう。

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