マ王の花嫁 
潤んだ目でひたすらライオネル王を見つめるパトリシアは、王のことが好きなのだろう。
きっと、この日のために髪をセットして、とびきり素敵なドレスを着て、めかしこんだに違いない。
全てはライオネル王に「再会」するために。

と思っただけで、私の心中が黒いモヤに包まれる。

でも、いや、だからか、ライオネル王が紹介したにも関わらず、パトリシアは私の存在を無視して、王にばかり話しかけている。
一方、話しかけられているライオネル王は、そっけない返事だけで全て済ませると、チラリと私の方へ視線を投げた。

ほんの一瞬だけ、でも思いきり不本意な表情を見せたパトリシアは、次の瞬間には貼りつけたような笑顔を私に向けると、やっと私の方を向いて、「はじめまして、王妃様」と、挨拶をした。

< 171 / 400 >

この作品をシェア

pagetop