マ王の花嫁 
黒いモヤをふりきるように、ゴクンと唾をのみ込んだ私は、努めて淑やかに、そして軽く、扉をノックした。

すると、すぐに「入れ」という声が扉の向こうから聞こえてきたので、私はノブを回して扉を開けた。

「・・・どうした、ディア」
「あ、あの・・・」

まさか私だとは思わなかったのか。
端正なライオネル王の顔には、落胆の表情が隠しきれていない。
やはり来るんじゃなかった・・・。

「ディア?」
「えっと!明日のウィンチェスター卿の所でも、畑へ行くのでしょう?」
「・・・そうだが」
「でしたら、明日も動きやすい服を着ようと思います。ペチコートやコルセットはなしで、という意味で・・・それだけ言っておこうと思って。では、おやすみなさいませ」

踵を返して扉へ向かう私を、ライオネル王が呼び止める。
私は一瞬ビクッとしながら、でも、王の方をふり向かないまま、「はい?」と返事をした。

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