マ王の花嫁 
・・・これであちらの方を見たのは何度目になるかしら。
でも、つい視線が吸い寄せられてしまって、見ずにはいられない、ような・・・。

私は、「稲の収獲作業って、本当に・・・力仕事なのね」と言いながら、ライオネル王との会話を思い出していた。

『ダメだ、ディア』
『・・・まだ何も言ってませんが』
『言わなくても分かる。おまえも稲刈りをしてみたいのだろう?おまえの目が光りながらそう言っているぞ』
『う・・・ええ』
『おまえに稲刈りを初体験させてやりたいのは山々だが、おまえには無理だ、ディア』
『何故ですの?私、茶摘みや花の収穫をしたことは何度もありますよ。だからきっと私もお役に立てる・・・』
『だが、花の収穫と稲の収穫は、恐らく方法が違うはずだ。稲刈りは力仕事。故に男の仕事だ。おまえはたぶん、片手で鎌を持つことすらできんだろう』
『あ・・・・・・』
『分かったな?ディア。おまえは他の婦人たちとそこのベンチで休んでろ。後で刈り取った稲を見せてやる』

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