マ王の花嫁 
「ごめんなさい!もしそのことを知っていたら、私も“貸しましょう”なんて言わなかった・・・」
「分かっておる」とライオネル王は言った後、私に顔を近づけた。

そして、「相変わらずおまえには殺気が無いからな」と、私の耳元で囁く。

思いきり体がビクンと跳ね上がった私は、それをなだめるように、自分の胸に左手を当てると、抗議の意を込めて、ライオネル王を睨み見た。
そんな私の視線を、王は涼しい顔で、容易く受け止める。

「王妃様の国では、その迷信ないんですか?」
「ええ、ない・・と思う。私、今初めて聞いたから」
「あれはグルドとキセロ族に伝わる迷信よ」
「あぁそっか」
「今回の件は、“いざという時の備えを怠るな”とこいつが教えてくれた。次回からは予備の履物を持って行く事にしよう。だが、靴や服は二度と噛むなよ」とライオネル王が言うと、ウルフはそれに答えるようにキャンと一吠えした。

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