マ王の花嫁 
エイリークの姿が見えなくなると、サーシャはフゥと安堵の息をついた。
平然としているように見えて、実は私同様、気が気ではなかったのかもしれない。

「ねえサーシャ。足は大丈夫なの?」
「ええ。刺される虫はちゃんと選んだから。酷そうに見えるけど、もう治りかけだし」
「そう」
「それより。この花を王妃様の部屋に飾りましょう」

スカートのポケットに瓶を入れたサーシャは、そこから花ばさみを取り出すと、咲いている近くの花を数輪切った。

「これで良し、と。ねえ。あなたは知ってる?コルチゾールの希釈液って、虫刺されによる腫れや炎症を抑える効果があるんだけど、それに白百合の花粉を混ぜると・・・簡単なしびれ薬が出来るって」
「・・・え」

よく見ると、サーシャが持っている花の中に、白百合も入っていた。

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