マ王の花嫁 
『・・・・・・ぅ。ディア・・・』

ライオネル王が、刺された脇腹を手で押さえながら、地面に膝をついた。
手に持っていた剣を力なく落としたカシャンという音が、辺りに響く。
私は王の方へと近づくと、自分に血がつくのも構わず、脇腹を抑えている王の手に、すでに血がついている自分の手を重ねる。

『ライオネル様?ライオネル様!しっかりして・・・!』

懸命に手で押さえても、血は止まるどころかどんどん溢れ出てくる。
あぁどうしよう・・・!

『ライオネル様?動けますか?それとも私が助けを呼びに行く間、ここにいますか?』と私は言いながら、濃紺のスカートの裾をできるだけ長く破った。
それを脇腹の傷口を塞ぐように巻こうとしたら、王の手で遮られてしまった。

『ライオネル様?何を・・・』
『・・・逃げろ・・・』
『ら・・ライオネル、様・・?』
『走れ・・ここから、逃げるんだ。早く・・・!』
『いや・・・嫌です!あなたを置いて行くなんて、そんなことできな・・』
『行け。早く・・・行け!おまえは・・生きるんだ・・』
『ライオネル・・・』
『生きろ・・・俺のことはもう・・・良い。だが、おまえは・・・生きるんだ・・・ディア、マイラブ・・・』

私の手の上に置かれていたライオネル王の大きな手が、そのままだらりと地面に落ちた。

『・・・ライオネル?ライ様っ!目を覚まして!』
「いやあーーーっ!!!」

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