マ王の花嫁 
一歩踏み出した私の足は、そこで止まってしまった。
ライオネル王に真実を話す事を怖気づいたのではない。
ただ・・・今は、これ以上ライオネル王の所へ近づいてはいけない、私がここにいると、今、王に気づかれてはいけないと、とても強く思ったのだ。

何故・・・・・・?

その時、私の目の前に、ビジョンが現れた。

『ライオネル様!』
『ディア?!』

あぁ・・・・・・!
そうか。

ライオネル様は、私が声をかけた事で気を削がれて・・・その一瞬の隙をつかれて、脇腹を刺されたのか!
私がライオネル様を刺したんじゃなかった・・・。

そしてライオネル様は、刺した私を許すどころか、追手が来る前に逃げさせようと・・・だから「逃げろ」と必死に言ったのだと思っていたけれど・・・そうではなくて。
“本当にライオネル様を刺した者”に私も殺されないために、「逃げろ」と・・・。
「おまえは生きろ」と、最後の力をふりしぼって、言ってくれたのか。

心の底から安堵し、その場に崩れ落ちそうになった私の体を、誰かが支えてくれた。

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