マ王の花嫁 
「・・・サーシャは・・・私が中々、その・・任務を遂行できない事に、かなり焦っていました。それで・・・」
「おまえが昨夜うなされた事は、ニメットたちにも知らせたからな。できるだけ寝かせておけと命を出しておいた。それでサーシャは、おまえが俺に全てを話したのではないかと疑ったのだろう。それでも俺が生きている、という事は、おまえはもう俺を殺すことはできんと判断した上で、ならば自分が殺るしかないと思い至ったのだろうな。全く・・・。何やら臭う薬を塗った剣を、俺に向かってふり回していたが、愚かな奴よ。俺の重そうな体躯に騙されおって」
「さっ、サーシャには、村に家族がいます。私にも・・・」
「男か」
「はい?えっと、えぇ。フィリップが・・・母が亡くなった後、私を育ててくれた、いわば私にとって父親のような存在で・・・」
「あぁ、祖父程の年だという」
「はぃ・・・」

それを話したのは、初めての夜の、ライオネル様に抱かれた時だった・・・と思い出した私の頬が、じんわり熱くなる。

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