マ王の花嫁 
「こら犬っ!あっちへ行け・・・」
「シーザー!もう少しだけ待ってください」と私は言うと、小さな毛むくじゃらの体を抱きかかえた。

「シーザー。シーザー・・・」
「キュィン・・・」
「私は大丈夫。すぐ戻るから・・・それまでフィリップのこと、頼んだわよ」

シーザーに顔を埋めて少しだけ泣いた私は、最後にギュウッとシーザーを抱きしめると、そっと下へおろした。
でもシーザーは、いつまでもそこから動こうとしない。
私は、シーザーの目線に合わせるように屈んで、シーザーの頭を優しく一撫ですると、シーザーはまた、キュインと切ない声で鳴いた。

「さあシーザー、フィリップのところへ行って。私は大丈夫だから」
「ウ~・・・・・キャンッ!」

やっとフィリップのところへ駆けて行ったシーザーを見届けた私は、馬車の方へと歩き始めた。

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