マ王の花嫁 
「王妃様、おなかはすいていませんか?もう丸一日以上何も召し上がっていませんよ。出発前に何か食べて行かれませんか?」
「いいの。おなかはすいてないし。それに、仮に今食べてしまうと、馬に乗ったとき、揺れで吐きそうになるかもしれないから」
「然様でございますか・・・」
「時間が惜しい。行くぞ」

そう言って私の手を取ったライオネル王は、サッサと歩き出した。
左手で私の手を握り、右手で羽ペンを持ち、執事の一人が差し出す紙に、何か―――恐らく署名(サイン)―――を書いている。
鞄を持っている執事たちは、私たちの後に続く。
もちろん、私たちを見送るために、残りの執事・侍女たちも後に続いた。

< 325 / 400 >

この作品をシェア

pagetop