マ王の花嫁
「顔に陰りがある民が多い。町には活気もなく、荒涼とした雰囲気を感じる。メリッサに聞くまでもなく、王宮(ここ)まで来る道すがら、町と民を見て受けた印象を言っただけだ。対して、無駄に立派過ぎる王宮の佇まい。夕暮れ時の町にはあかりが灯っていないと言うのに、ここには必要ない所にまであかりが灯されている。恐らく、自分自身と、自分が暮らす家である王宮さえ繁栄すれば、それで良しと考えているのだろう。だが、我欲を貫き、己の利益ばかり追求していれば、いつか国は滅びる。恐怖心を煽って民を支配してもそれは同じだ。第一、そんな統治者のどこに威厳がある?そんな統治者に嫌々従う者はいても、慕う者などおらん。統治者というのは、己のために土地を増やすのではない。多くの土地を統治しているから偉いのではない。その地に暮らす者達が、日々平穏無事に暮らせるよう、土地を護る。民の意見に耳を傾け、皆と共に国を護る。それが、国と民を統治する国王の役割だと、前ロドムーンの統治者である亡き父上から俺は教わった。そして俺は、父上の信念に賛同している。仮に俺が今死んでも、其方よりももっと適任な者がロドムーンを統治してくれる。よって、余計な“心配”は無用だ」