マ王の花嫁 
ここには、色とりどりのお花や、緑豊かな植物、そして薬草が、たくさん植えられている。
単に鑑賞をするために植えられているのではない。
お花や植物、そして茶葉は、市場やレストラン、学校に、薬草は、薬局や、術師と呼ばれる優れた術の使い手のところにも卸される。

お花や植物は、人々の生活には欠かせないもの。
つまり、需要は必ずある。

今から20年前にそう考えた私の亡き母が始めたこのビジネスは、当初は規模が小さく、ここで働く人も少なかった。
母が亡くなった15年前に、母の知り合いだと言うフィリップがビジネスの後を引き継ぎ、親がいなくなった私を育ててくれた。
私が成長するのと比例して、ビジネスの規模はどんどん拡大していき、20年経った今では、この村になくてはならないビジネスとしてしっかりと根を張り、確実に人々の信頼を得ている。
特に薬草と茶葉の品質の良さは、術師の間でも名高く、贔屓にしてくれている術師も多い。
薬草と茶葉の品質の良し悪しを見極めることが術師の命運を分けると言われるほど、彼らにとっては非常に大切なこと、且つ、優れた術師であるための基本中の基本だから・・・。

誇らしい気持ちで胸がいっぱいになった私は、顔に穏やかな笑みを浮かべて、また茶葉を摘み始めた。

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