マ王の花嫁 
『フォルテンシア。無味、無色無臭、少し粘り気あり。これを2滴口中に含むと、すぐに睡眠状態に陥る。3滴以上口中に含むと死に至るから、あなたも使い時には気をつけなさい』

ついさっき、ラワーレの侍女として(本当は私の監視役として)、ロドムーンまでついてきたサーシャから手渡された透明の小瓶を、私はじっと見た。

『これ・・どうやって使えばいいんですか』
『魔王を眠らせた後、顔に枕でも押しつければ?』
『そっ、そんな・・・っ!』
『今更何ビビッてんの?ここまで来たんだから、もう引き返せないってあなたも分かってるでしょ?いい?今はまだ誰にもバレてない。初夜であるこれからが、最初で最後のチャンスだと思って覚悟決めなさい』
『うっ、うぅ・・・』
『ここに残ってる私だって命張ってんのよ。全てはあなた次第なんだから。頑張って。あ、そうそう。ドレンテルト王からの伝言』
『何ですかっ?』

『幸運を祈る。以上』

・・・罪のないラワーレの民を、私の一存で死なせるわけにはいかない。
だから・・・ごめんなさい、ライオネル様・・・。

私は、ドレッサーの白い曲木椅子に座ると、透明の小瓶をそっと開けた。
そして蓋についている筆にフォルテンシアの液をつけると、唇に塗って・・・隣室のドアを開けた。


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