マ王の花嫁 
朝食後、サーシャの「案内」で、王宮内にある庭園の一角に、私たちは来ていた。

できればサーシャと二人きりにはなりたくないけれど、私もサーシャに聞きたい事があるし。
どのみち避けられない事なのだからと自分に言いきかせながら、意を決してサーシャを見た。

「ちょっとあなた、何やってんのよっ!まだ魔王生きてるじゃないの!」
「え、えぇ。見事に失敗しちゃって・・」

周囲に誰もいないとはいえ、油断は禁物だとお互い心得ているから、私たちは、笑顔を貼りつけて、小声でしゃべっているものの、サーシャは、苛立ちと咎める気持ちを、視線でも私に伝えてきている。

「全く。昨夜が一番成功する確率高かったのに。ヘマやらかした上に、ちゃっかり魔王に抱かれちゃって」
「あっ、そ、それは・・・っ。初夜だったし、拒否したら余計怪しまれるかと・・・それでですね、あれ、フォルテンシアじゃなくて、蜂蜜でした」
「・・・え?なんで・・・あぁ、あいつか。フィリップ・ドゥクラ。元斬込隊長の爺(じじい)」
「え。いや、でも、フィリップがすり替えたとは限らないでしょう?」

確かに私もフィリップが小瓶をすり替えていたと思う。
私を人殺しにさせないために。
でも・・・。

「確証はないんだから、この事はドレンテルト王には報告しないでください」と私が懇願すると、サーシャはフーッとため息をついた。

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