マ王の花嫁 
でも、今この部屋にいるのは、私とアイザックだけ。
そして肖像画家のアイザックは、私同様、自分の世界へ入り込むタイプらしいので、私の返事など全く気にしてない様子なのは幸いだった。

あぁ、考え事を声に出してなくて、本当に良かった・・・。

「もう少し頭を上げてー。イエーッス!ベリーグーッ!顎を引いて、目線は5度斜め下・・・それでは下過ぎですっ!」

「ノンノンッ!」と言いながら、私の方へツカツカと歩いてきたアイザックは、口だけで説明されても分からない私の顔に手を添えて、自分が気に入った“角度”を作り始めた。

うぅ。あとどれくらい、この・・「斜め5度下目線」でいなければならないのかしら・・・。
肖像画のモデルになるのも、私にとっては大変な仕事だわ・・・。

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