「嘘だよ。」
4月1日
「──ねえ、今日ってエイプリルフールでしょ?」
そう言って目の前で微笑む彼女。
俺は目をパチクリさせて、その顔を見つめる。そして、カップに手を伸ばすとコーヒーを一口含む。
新年度の始まりの4月1日。
始まりの日が日曜日ということで、のんびりと過ごそうと勝手に計画していたのだが……そうもいかないようだ。
彼女は、俺の反応を今か今かと待っている。
その期待の眼差しはやめてくれ。
「……だったら何?」
俺が冷静にそう返すと、彼女はムスッとして、これでもかというほど頬を膨らませる。
「何ーっ!?その冷たい反応っ!!本当にいつもいつも冷めてるんだから!!!!」
「いや通常運転です。」
「その通常運転が冷めてるのっ!!」
朝の食卓に響く、彼女の大きな声とは対照的に、テレビの画面では男性のニュースキャスターが、淡々と先日起きた殺人事件の事を語っている。