見上げた空は広かった
「どうした急に」

とアルベルトは言った。

「いや、俺フレンチ話せるけどフランス行ったことないからなと思って、ていうかここ以外のヨーロッパの国に行ったことない」
俺は半分ほんとで半分自分の本音を隠すためにそう言った。

「ドイツは?」ハナが俺に聞く。
「親はドイツで生まれてるけど俺は一回も行ったことないんだよね」
本当はドイツの大学に行きたかったんだけどな、と少し前のことを思い出した。

「ていうかドイツ語話せるの?」ハナが疑い深く聞く。
「もちろん、家ではドイツ語なんで」
僕は少しだけ得意げに答えたけれどもきっと信じてもらえてない。
「じゃドイツ行く?」アルベルトが提案する。
いや僕はフレンチが話せることを見せたいわけで、ドイツ語なんて名前もパスポートも見た目もドイツ人みたいな俺が話せたところでギャップも何もないではないか。
それにアルベルトがフランス語話しているところも見て見たいし、ていうかこいつがドイツ語も流暢に話せたらそれこそ僕の勝てる要素ゼロだよなと思った。

「いやどうせならフランス行こうよ、てかフランスの方が近いし」
と僕はフランスを押した。
「車?」ハナが聞く。
「アルベルトの運転ね」と僕は押し付ける。
「私も賛成、パリ?リヨン?」ハナが意外にも乗り気だったのが功を奏した。
アルベルトはこうなると断れない。
「リヨンなら運転してもいいけどパリは無理だ」
ほら、女々しいから賛成とも反対ともはっきり言わない。
きっとこれだからハナが不安になるのだろう、

「じゃ3人でリヨン決定。ハナ、ホテル探しててね」
僕は楽しみでついしゃいでしまった。

僕がデタラメにホテル選ぶよりしっかりしてるハナにやらせた方が全員が幸せになるような気がした。
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