見上げた空は広かった
そのままアルベルトが帰ろうと言うので帰った。

帰り道はさっきまでの沈黙が嘘かのようにたわいもない会話をした。

アルベルトは部屋の前まで来ると今度ジョイントを吸うときに連絡するから番号を教えて欲しいと言った。
私は躊躇などせずスイスのケータイ番号を彼に教えた。

そのままサヨナラを言って部屋に戻る。

買ったものを冷蔵庫に入れる。
ギネスビールを一缶だけ空けた。
机の横の本棚に置いてあるゲーテの格言集を手に取った。
昔から古典文学を読むのが好きだった。
周りに言うと笑われるので誰にも言ったこはない。
幼馴染以外を部屋にあげたことはないし、幼馴染は本など全く読まないから他人と本について話したことなどない。


「人間を堕落に導く最も大きな悪魔は自分自身を嫌う心である」
その一節が書いてあるページを本の中から探すし出す。
< 28 / 134 >

この作品をシェア

pagetop