君とだから、歩いて行きたい。
「………」
「………」
2人の間に会話はない。
それもクラスを出てからずっと。
周りの子たちが「凛バイバイ」と言ってくる度に笑顔を貼り付けて挨拶を返す。
それだけで精一杯だった。
私たちが一緒にいるのを珍しそうに見てくる子だって沢山いた。
小さな声で何か言ってる。
詳しくは聞こえないけど、私と暖の珍しい組み合わせに対してなんだってことは雰囲気で解った。
「………」
「………」
何も喋らない。
何も話さない。
ただ一緒に歩いてるだけ。
自分が息してるのかさえ分からなくなってくる。
それくらいこの時間が苦しくて、泣きそうなのに、とてつもなく愛おしかった――。
「凛」
「っ!」
暖が私の名前を呼んだのは、私の家まであと3分くらいまで来た時。
いつもは長く感じる15分のうちの12分。一緒に歩いてる人が暖だってだけなのに、こんなにも短く感じるなんて…。
「………な…に…」
声にならない声が無意識で出てしまう。
不審に思われたかもしれない。
私が緊張してるって、声が震えてるって思われたかもしれない。
そんなことを思いながら暖の言葉をひたすら待つ。