君とだから、歩いて行きたい。
暖の唇が少し躊躇ったように動いた。
「――この前は…ごめん……」
"ごめん"……? それは一体何に対してのごめん?
私に言った言葉への謝罪?
無理矢理友達だと言わせたこと?
いろいろ思い当たる節はあっても、どれも違う気がして言葉に出来ない。
何も答えない私に、暖は言葉を紡いでいく。
「俺だって、凛を傷付けたいわけじゃねぇよ…。でも俺たちはっ、!!」
「凛……?」
「っ!!」
途切れた暖の声の代わりに聞こえたのは、
「お、お母さん……」
買い物帰りのお母さんの声だった。
そうだ……お母さん今日仕事休みだって言ってたもんな…。
ぼんやりそんな事を思って隣を見ると、驚いた様子でお母さんを見て立ち尽くしてる暖。
「……暖?」
私の呼びかけにも応じず突っ立ったまま動かない。
どうしたの……なんか変だよ…。
「の、暖……?」
震えそうになる声を抑えながら暖を呼ぶけど、どこか顔色が悪いようにも見える…。
暖? ねぇ、どうしたの? 何かあったの?
お母さんに助けを求めようとしたその瞬間だった。
「の……ん…?」
「…えっ?」
聞き間違いじゃない、お母さんが呼んだのは、暖の名前だった…。