君とだから、歩いて行きたい。


どこかイライラした様子の仁に小さく笑い、仕方なく作業する手を動かす。


静かな教室に響く部活中の運動部の掛け声。


どこからか聞こえてくる残ってる生徒の笑い声。


どれもこれも当たり前みたいで当たり前じゃない。


そんなポエマーな考えをしてたからかな。ほんの数秒、自分の名前が呼ばれた事に気付かなかった。



「こらっ!」

「ぅ、えっ!?」



驚いて仁を見れば、親指で教室の扉を指している。


それに習い顔を動かせば、見知らぬ男子生徒が1人突っ立っていた。


訳が分からず首を傾げれば、目の前の仁が面倒くさそうに「告白でしょ」と言っていた。


……あぁ。そういう事。


静かに椅子を引いて立ち上がり、男子生徒の元へ行く。



「ごめん、そこの空き教室行っていい?」

「あ、うん…」



とりあえず返事をした私に、黙々と作業している仁の"行ってらっしゃい"が聞こえた。


何も答えず手だけ振ったけど、気付いたかな?


2つ隣の空き教室に移動した私たち。


―――知らない男子だから、どうすればいいのか分からない。


空き教室に入って5分くらい経った時。ずっと窓の外を見ていたその男子が勢いよくこっちを振り向いた。



「あ、あの!」

「…っはい」

「あ、の、ずっと好き…でした!」

「……はい…」

「良かったら、俺と、付き合ってくれませんか?」

「ごめんなさい」

「えっ……」

「え?」



な、何?


なんでそんなに驚くの?

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