君とだから、歩いて行きたい。


2人をボーッと眺めてる私に暖が声をかけてきた。



「凛、今日はここで。また今度……ちゃんと話せる時に話すから…」

「暖っ!」



私の大好きな、暖。


その暖を呼び止めたのは私……じゃなくて、お母さんだった。


お母さんの声に暖は驚いて、泣きそうな顔で振り向いた。



「みんなに……よろしくね…」

「分かって…ます…。失礼します…」



ここから一刻も早く立ち去りたい。


そんな雰囲気が暖から伝わってきた。


それが無償に悲しくて。切なくて。



「……凛、ごめんなさい…。だから、泣かないでちょうだい……っ…」



お母さんの言葉で自分が泣いてることに気付いた。


泣きたかったわけじゃないのに。


悲しいけど、寂しいけど、暖はちゃんと話してくれるって、そう言ってくれたから。


だから泣く必要なんてないのに。


どうして私は、泣いてるんだろう――……。



「……凛」

「おっ、かぁ…さんっ…」

「……帰りましょ…」



お母さんに手を繋がれて私は子供みたいに泣きながら帰った。


大好きなお母さんの手が今日はなんだか怖くて、本当は振り解きたかった……。


どうして…。


暖を好きだって気付いたあの日から私、泣いてばかり。


こんなに好きなのに。


悲しくて、切なくて、寂しいけど、それ以上に暖が好きで大好きで堪らないのに……っ。


どうしていつも大切なことが伝わらないんだろう…。


暖はいつも、大切なことだけを濁して私の前からいなくなっちゃうんだろう……。


行かないで…行かないで……っ。


私の側にいて。


私の隣で、暖の気持ちを、私だけに教えてよ…。


もう絶対に、逃げたりしないから…。

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