君とだから、歩いて行きたい。


自分の気持ちに素直でいたい。


暖の気持ちから逃げたりしない。


お母さんの話だって怖がらずに聞くから…。


だから暖、どこにも行かないで…っ…。


―――家に帰ってきても尚泣き続ける私をお母さんはソファに座らせた。



「……凛…聞いて…くれる……?」



お母さんの声音から不安なんだってことがよく分かった。それを分かっていながら私は首を横に振る。



「…っの、暖が…また今度……話してくれるって…っ」



言葉を詰まらせながらそう話す私にお母さんは一息ついて続けた。



「そうね……それじゃあ私はその時が来たら話すわね…。だから凛、もう少しだけ待ってて…」



そう言って私を優しく抱きしめたお母さん。


泣きながら暖の温もりに触れたいと思った。


暖に抱きしめて欲しいと強く願った。


お母さんに申し訳ないと、心の中で謝りながらも求めている人は1人しかいなくて……。



「ごめっ…お母さっ…ん……」

「もういい。もういいから、泣かないの…」

「……うっ…ふ……っ…」



ねぇ、暖。 止まらない涙はどこへ行くのかな。


暖を想って流す涙は、暖の元へ行くのかな。


暖に…届いてたりするのかな……。


枯れない涙と一緒に、言葉に出来ないこの想いも暖に届いてしまえばいい。 本気でそう思った。


逃げないと誓っても、怖がらないと決めても、心の片隅で震えてる私がいた。


嫌だと。


聞きたくないと嘆く臆病な私。


―――本当は少しだけ気付いてたの…。


暖は私に隠し事をしてるって。


あの日、廊下で私に嫌いだと言った暖は本当に苦しそうで、悲しそうだった。


あの時も何かを言おうとしてたね。


何を言いたかったの?


何を言おうとしてくれてたの?


それはきっと、今日に繋がることなんだって、今になって気付くのは遅いかしら……。


ねぇ、暖。


あなたの気持ちを聞かせて。


まだ私を嫌いだって思ってるの?


私を好きになる可能性はどこにもないの?


ねぇ、暖……。


今すぐ会いたい。


今会わないと、涙が止まりそうにないの…。


私を笑わせてくれるのは暖なんでしょう?


だったら笑わせて。


私を笑顔にして。


暖の笑顔で、言葉で、気持ちで。


暖の全身で私を笑顔にさせてよ…。


溢れる想いは暖だけのものだから……。



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