よいシエスタを(短編集)
夜も、朝も
いたずらの夜
【いたずらの夜】
腕が引っ張られているような妙な寝苦しさを感じて目が覚めた。
明かりを求めて身体を捩ると、右手がくいと引っ張られる。何か細いものが絡みついているようだ。
タオルケットがほつれてしまったのかな、と。自由がきく左手で枕元を探る。
ようやく携帯を探し当てかざしてみると、小指に糸が巻き付いていた。辿った先にあるのはタオルケットではなく、隣で寝ている彼女の小指。糸の色は赤。
運命の赤い糸か。
どうやら俺が寝付いたあと、こっそり彼女が結んだのだろう。
ふっと笑って、彼女の頬を撫でた。
こんなことしなくても、きみとはずっと一緒にいるんだって思っているよ。
心の中で言った言葉が聞こえたのか、彼女が「んん」と返事をするように唸って、口角を上げた。
(了)