よいシエスタを(短編集)
朝、カレンダーのお月さまマークに気付いた彼が「生理来たの?」と尋ねる。
「ううん、来てないよ。ゆうべお月さまがあんまり楽しかったから、記念に書いといた」
「月が楽しいって、なんだそりゃ。日本語間違ってんぞ」
「あ、ねえ、次の飲み会いつ?」
「あー、今晩かな。別の先輩に誘われて」
「そっか。なら今晩もお月さまを楽しめるかも」
「ふーん、そら良かったな」
「うん、今日もルナの日を楽しむぞー」
言った瞬間、今まで興味なさそうにコーヒーを啜っていた彼が、それを思いっきり噴き出した。
そして勢い良く床に両手をついて、弁解を始める。
「違うんだ! 先輩に連れて行かれた飲み屋の子で、浮気なんかじゃないんだ! ただ一緒に酒を飲んだだけの、客と店員の関係なんだ!」
あんまり必死に言うから、慰めようと歩み寄って肩を撫でたけれど、昨夜のように「ルナちゃん」の名は漏れなかった。
どうやら「ルナちゃん」遊びは寝ているとき限定らしいと思い知って、残念に思いながら彼の背中をぽんぽん撫でた。
(了)