真面目なキミの、
不思議に思いながらも、生徒会室に到着。
「…失礼しまーす……あれ、浅井先輩だけですか?」
扉を開けて中に進むと、生徒会長の浅井慎也(あさい しんや)先輩ただ一人。
先輩は、長ーい足を組んで椅子に座っていた。
「あぁ、和香ちゃんか、肇くんはまだだよ?」
先輩はそう言って微笑った。
浅井先輩は、タレ目が印象的な爽やかイケメン。
その優しさと、ルックス、生徒会長としての頼れる手腕で、かなりおモテになる。
「そうですか~…ちょっとだけここで待たせて貰ってもいいですか?これ、返さないといけないんです」
あたしはそう言って、手元のノートを示した。
快く承諾してくれた先輩だけど、あたしには、それより気になっていることがあった。
「……先輩、何かありましたか?」
「…ん~…ちょっとね」
完璧な笑顔には、やんわり立ち入り禁止の色が見えた。
これは、聞いちゃいけなかったかも。
後悔するあたしに、この後の言葉を言えるはずが無かった。
先輩、あたしが扉から顔出したとき、ちょっと残念そうな顔しましたよね?
「……そう、なんですか」
「…あぁ、気遣わせちゃってごめんね」
元々タレ目の目尻が、更に下がる。
「いえ、全然そんな!大丈夫です」
「和香ちゃんはいい子だな~……あ、いいこと思いついた」
下がっていた目尻が、元に戻って今度は少し企むような目をする先輩。
きょとんとするあたしは、これからの運命を、知らない。
「俺の彼女になってよ」
生徒会室の窓から初夏の風が吹き込んだ。
風と一緒に届いた先輩の言葉が、世界を止めた。
………今、なんて?
「……え、」
「どう?ダメ?」
「…いや、あ、ああの、ど、どういうことですか…!?!?」
え、彼女って、え!?!?!?
あたしの脳内は、半分がパニックで、半分は混乱を極めていた。
つまりはもう、全体的に大混乱。
未曾有の大災害。
「か、彼女って、あの彼女ですかぁ!?」
「たぶんその彼女だと思うけど?」
おかしそうに笑う先輩の笑顔はキラキラ輝いているけど、ちょっと待って…!!
え、それって、付き合うってこと?だよね!?
それってそれって、あたし、彼氏が出来ちゃうってことだよね!?!?
「あの、えっと、あの、、」
「和香ちゃん落ち着いて、深呼吸!」
「は、はひ!すぅ…げほっげほっっ」
「っえ、大丈夫!?!?」
「……2人して何やってんですか」
そこに現れたのは、涼しい顔して戸口に突っ立っている肇だった。