真面目なキミの、



気がつけば、テンションのままに駆け寄って叫んでいたあたし。

肇の後日談によれば、無意識にぴょんぴょん跳ねていたらしい。


「肇~!!あたし、彼氏出来ちゃったかも~!!!」


肇はあたしの言葉に、信じられない、という言葉を口にしなくても分かるくらいに、ぽかーんとした顔をした。


「……は?先輩、本当に何やってんすか」

「何って…告白?」

「告白って………本気ですか?」

「ああ、本気だよ」

「俺にはそうは見えませんけど」

「ふーん?」


肇の眉間には、みるみる深い谷が出来上がっていく。

よく気をつけて聞けば、声のトーンも下がっていた。


「……はじめ?」


気がつけば、浅井先輩も挑戦的な目で肇を見上げていて。

その間に火花が見えた気がしたけれど、置いてけぼりのあたしは、ただ2人の顔を交互に見ることしか出来ないでいた。


それから、生徒会室には重い沈黙が降りた。

ワイシャツ一枚が丁度いい季節のはずなのに、部屋の温度が、時計の秒針に合わせるように下がっていくような感覚。

太陽が、その姿を雲に隠す。


2人は見つめ合う、いや、睨み合うだけで、一言も発さない。


どこか探り合うような視線が、交わる。


時間にしたら、1分も無い、でもそれ以上に感じた沈黙を破ったのは肇だった。


「……先輩、辞めといた方がいいですよ」

「それはどうして?」

「コイツ、救いようのないアホですよ」


そう言って私の頭に手を置いてのしかかってくる。

いきなりなんなの!?ってか重い!!

なんとか手を退けた。

ていうか肇くん。


「マジな顔で、さらっと人の悪口言うの辞めよ…?」


すると先輩は、優雅に座っていたイスから立ち上がって、肇と対峙した。

170後半の肇と並べるくらいの身長の先輩。

その顔に、また柔らかい微笑みが灯る。


……え、どっちも私の反論無視なの??


「手のかかる子の方が可愛いってよく言うじゃない?それに、和香ちゃんは心の綺麗ないい子だと思うよ?」

「手のかかり方が以上です。邪念の塊ですよ。恋に恋してるガキだし。悪いことは言いませんから、辞めておいた方がいいです」


その言葉に、浅井先輩は一瞬目を細めた。

まるでその心理を測るように。


「和香ちゃん」

「はっ、はい!」

「和香ちゃんはどうしたい?」

「…っど、どうしたい…」

「俺と、付き合いたい?付き合いたくない?」



正直、言葉に詰まった。



どうしてだろう。

あたしは、彼氏が欲しかったはずなのに。

なのに、どうしてなのか、言葉が出ない。

言えばいいじゃん。

付き合いたいです。って


〈彼氏欲しかったんでしょ?〉


そう頭の中のあたしが問いかける。

すると、2人目のあたしが、意識と無意識の隙間からひょっこりと顔を出してまた言う。


〈でも、今そんな気分じゃないよね?〉


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