真面目なキミの、
、忠告と本音
――――……それから一週間後。
あたしと肇は、一言も交わすことなく夏休みに突入した。
心配していた補習にはなんとか引っかからなかった。それはいい。
あれから肇は、分かりやすくあたしを避けている。
夏休み3日目に隣の是永家に行くと、肇ママには
『あの子今朝から風邪っぽいとか言って寝込んでるのよ~…、誰も通すなって言われてるから、ごめんね、和香ちゃん』
そう言われて通してもらえず……
おちゃめに顔の前で手を合わせる肇ママは可愛かったけど、気持ちは下がりっぱなしだった。
もう、肇とは一緒に勉強したり出来ないのかなぁ……
そう考えて、はっとする。
いや、いやいや、何言ってんのよあたし!
あんたには素敵な彼がいるじゃない!!
優しくてイケメンで、頭も良くて人望もある。
付き合いはじめの日だって、肇のことで落ち込んでるあたしを放課後デートに連れ出してくれた。
この前だって、落ち込んでるあたしに、元気出してって、ジュース差し出してくれたし。
終業式だった昨日は、憧れの中庭ランチで楽しかったし……先輩にも、笑顔が見れて嬉しいって…
……あたし、サイテーじゃん。
だってこれじゃ、先輩に頼ってばっかりだし、落ち込んでばっかりで気を遣わせてるよ。
彼女なら、もっと彼氏の癒やしになってあげなきゃいけないのに。
こんなんじゃ、肇に「バカ」って言われても、仕方ないよ……
ベッドの上で一人盛大なため息を吐いた。
ゴロンとうつぶせになって、枕に顔を押し付けた。
無意味なうめき声が、口の端から漏れた。
もう嫌だ、こんな自分。
後から後悔してばっかり。
……でも、先輩を選ばなければ良かったとは思っていない。
先輩は、いい人だ。
推薦を狙う先輩は、他の人より勉強してないよ、なんて言うけど、それは今までの努力があるから。
本当に、あたしには勿体無いくらい。
出来るだけ、受験の邪魔にならないようにしなきゃ。
肇のことは、たぶん時間が経てば少しずつ良くなるはず。
……時間が解決してくれるのを待つしか、あたしには思いつかない。
また明日訪ねてみよう。
肇の好物でも持って。
クーラーをガンガンに設定した部屋は寒いくらいで、つい、肇の部屋の温度はもうちょっと温かいな……なんて考えてる自分に嫌気が差した。
外は、セミがうるさいくらいに泣いている。
あれくらい大きな声で叫べるなら、セミはストレスなんて溜まらないんだろう。
そもそも、あと1週間の命で、ストレスもくそもないと思うけど。
そんな失礼なことを考えながら、ふと、
「ジェラート食べたい…」
思いついた。
あたしは、スマホのメッセを立ち上げる。
[お疲れさまです。午前の補習の後、時間ありますか?]
あたしからも誘わなきゃね。
先輩から誘われてばっかりだし。
……ん~でも、ちょっと緊張する!
えいやっ!!と勢いで送信。
送信を確認すると、丁度階下から名前を呼ばれてお昼を食べに行った。
部屋に戻ってきて確認すると、新着メッセージが一件。
少しドキドキしなから開くと……
[あるよ。何か食べに行く?]
やった!
若干叫びかけて、手で口を塞いだ。
あたしは、すぐさま返信。
[はい!ジェラートの美味しいお店知ってるので、一緒に食べに行きたいです!]
[最寄り駅教えて]
[K駅です]
[わかった、K駅の南口で待ってるよ。誘ってくれてありがとう]
割と早めに返ってきた先輩のメッセ。
語尾のニコちゃんマーク。
それと一緒に、ついニマニマしてしまうあたしだった。