俺が愛した、あおいの話
「いつまで待たせるつもりなんですかぁー?」

声が聞こえて、振り返った。

今まさに戻るところだったのに、そこにはひとみちゃんがいた。

「あたしなんか邪魔者ですかぁー?帰った方がいいですかぁー?」

「ゴメン、ゴメン!いま…すぐ、行くから!」

山田は優しい口調で応えて、「行きましょうか」と小声で言った。

「…そうだな」

金曜日ということもあってか、店内は人で溢れてる。

その中をまずひとみちゃんが進み、山田と俺が順に追った。

「和也さん、どうかしました?」
キョロキョロしてたら質問されて、

「ちょっと知り合いに似てる人がいて…」
だけど違ったとすぐに答えた。

あんまりいいことじゃないけど、人の顔を見るクセがある。

電車の中とかこういう場所でも、ついつい拝見してしまう。

見すぎだよとか、やめなさいとか、さやかだったら注意するだろう。

そしてお決まりの台詞を言うんだ。

「もういい加減、諦めなよ」

それができたら苦労しないさ。
忘れられるなら、忘れてみたいよ。

だけどぬくもりも、笑顔も、涙も、、、
今でも全部、覚えている。
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