花束〜Bouquet〜【短編】
華菜との出会いは、一年ほど前。
ミュージシャンを目指している俺が、路上ライブをしている時に、彼女と出会った。
初めのうちは、ただ通りすぎていく人並みの一人だったが、いつしか俺の歌を足を止めて聴いてくれるようになった。
その頃は、そんな客の存在はとても貴重で、ものすごく嬉しかった。
ある時、俺が自ら作った曲を歌い終えたとき、彼女は笑顔で拍手をしてくれた。
そして、
「いい曲ですね」
と、それだけ言った。
しかし、その一言に俺はものすごく救われたんだ。
毎日ここで歌っていても、まるで自分は存在していないかのように、人々は足早に通りすぎていく。
彼女がそう言ってくれるだけで、自分が今までやってきたことが認められた気がした。
‥そして、彼女の純粋な笑顔に恋におちてしまったんだ。