許し方がわからなくて
私はひたすら引きずられるまま。

市瀬くんに声をかけることさえできない。

まさか、臣の浮気相手が市瀬くんの彼女だったなんて。

こんな偶然ってあるの…。

益々ショックは大きくて、気分が落ちていく。

おっきな公園の噴水の前で、立ち止まった市瀬くん。

『市瀬くん…?』

掴まれた腕はそのままで、ボンヤリ噴水を見ている。

いたたまれなくなって声をかけるけれど。

「椎ちゃん、なんかごめんね。まさかオレの彼女とは思わなかったわ。」

『市瀬くんが謝ることは何ひとつないよ。』

「でも…。よく行くカフェだったんだよね?行けなくなったわけだし、アイツと働いてるとこも同じビルだし、オレなんて同じ職場だよ。仰月は椎ちゃんを悲しませるような男じゃないと思ったんだけどな。」

とりとめなく呟くようにしゃべる市瀬くん。

市瀬くんは彼女と友達を同時になくしちゃったんだ。

『市瀬くんはカッコいいし、イイ人だからきっとふさわしい彼女ができると思うし、友達だってあんなバカ1人だけだろうから…えーっとだから…。』

何て言っていいかわかんなくなった。

市瀬くんはふんわり微笑むと。

「ありがとう。まさか椎ちゃんに慰められるとは。」

って、頭をポンポンして撫でられた。

なんとか伝わった?

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