ただ、そばにいて。
2)なくなった居場所
瑞希が出かけたあと、悠斗は火事のあったアパートを見に行くことにした。
店長の篠崎《しのざき》から立ち入り禁止が解除されたと連絡が入ったのだ。
冷蔵庫とパントリーの食材をもう一度確かめ、必要なものを書きだす。
瑞希の手足はとても冷たかった。
彼女のために、今夜はなにか体のあたたまるものを作ってあげたい。
悠斗はナップサックを背負い、ブーツを履いて外に出た。
おととい降った雪はまだ解けておらず、庭木の枝は綿帽子をかぶったようになっている。
車がようやくすれ違えるほどの狭い道の両側には、古い住宅が並んでいた。柏井家は、坂を上った突き当りに位置している。
轍に沿って、坂道を歩く。
仙台は東北のなかではあまり雪が降らない地域で、よほどの大雪でないと除雪車は出ない。
出動したとしても、大きな通りだけだ。
おとといの夜、アパートから瑞希の家まで重い荷物を背負いながらこの道を歩いた。
でも、そのときのことはあまり記憶にない。
曲がり角の公園に、小さな雪だるまがあった。
近所の子どもが作ったのだろう。
公園は滑り台とベンチがあるだけの、簡素なものだ。
そういえば、柚月の家に集まるとき、この公園を目印にしたっけ。
どんな景色を見て、何を考えながら歩いたのか、おとといの夜のことはあまりよく覚えていない。
けれど高校のときの記憶は、いまでも鮮明によみがえる。
店長の篠崎《しのざき》から立ち入り禁止が解除されたと連絡が入ったのだ。
冷蔵庫とパントリーの食材をもう一度確かめ、必要なものを書きだす。
瑞希の手足はとても冷たかった。
彼女のために、今夜はなにか体のあたたまるものを作ってあげたい。
悠斗はナップサックを背負い、ブーツを履いて外に出た。
おととい降った雪はまだ解けておらず、庭木の枝は綿帽子をかぶったようになっている。
車がようやくすれ違えるほどの狭い道の両側には、古い住宅が並んでいた。柏井家は、坂を上った突き当りに位置している。
轍に沿って、坂道を歩く。
仙台は東北のなかではあまり雪が降らない地域で、よほどの大雪でないと除雪車は出ない。
出動したとしても、大きな通りだけだ。
おとといの夜、アパートから瑞希の家まで重い荷物を背負いながらこの道を歩いた。
でも、そのときのことはあまり記憶にない。
曲がり角の公園に、小さな雪だるまがあった。
近所の子どもが作ったのだろう。
公園は滑り台とベンチがあるだけの、簡素なものだ。
そういえば、柚月の家に集まるとき、この公園を目印にしたっけ。
どんな景色を見て、何を考えながら歩いたのか、おとといの夜のことはあまりよく覚えていない。
けれど高校のときの記憶は、いまでも鮮明によみがえる。