ただ、そばにいて。

5)真冬のホタル

 ベッドに入ってしばらく経ったころ、小さな振動を感じて悠斗は目を覚ました。
 枕もとのスマートフォンが緑色のランプを点滅させながら震えている。

 時刻は深夜の二時だ。
 画面には〝嶋田涼介《しまだりょうすけ》〟と表示されていた。

 ――こんな夜中になんなんだよ。

 心のなかでぼやきながら通話に状態にし、「ちょっと待ってて」と言って悠斗はベッドを抜け出した。

 音を立てないように扉を閉め、素足で階段を下りる。
 今夜はいちだんと冷えこみが厳しく、足もとから冷気が這いあがってくるようだ。

 テレビを見ていたときに使ったブランケットがソファの背もたれにかけてあったので、体に巻きつけ、膝を抱えて小さくなりながら座った。
 もう一度電話を耳にあてると、テンションの高い声が電話の向こうから聞こえてきた。

「わりぃ、寝てた~?」
「……こっち、いま夜中の二時」
「そりゃ悪かったな。いまパリの凱旋門にいるんだけどさ、クリスマスシーズンのヨーロッパってやっぱすげーわ。イルミネーションだらけ。ちなみにこっちは夕方の六時ね」

「じゃぁこれから夕飯か」
 悠斗はあくびを噛み殺しながら答えた。
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