媚薬と私
「みどりさんも辞めて、段々メンバーが変わってきますね。」
「ほんと、そうだよね。」
「みどりのキャラは、強かったから、雰囲気変わるだろうな。」
そう言うと、「そうですね。」と言いながら、高藤由紀子はクスッと笑った。
その笑いを見て、僕は可愛いと思った。
僕たちは、駅のホームで電車を待ちながら、職場の話しを続けた。
彼女は聞き上手だ。
男は、自分の事を話したい生き物の為、聞き上手な女性が好きな傾向にある。
電車が来た。
僕が帰る方面だった。
「あっ、電車来ましたね。」
彼女は、かすかに口元に笑みを浮かべながら言った。
電車が通った時、風が舞い、彼女の黒髪がなびいた。
何だか、ここで乗ってしまうのは、勿体無い気がしてきた。
彼女と、もっと話したいと思った。
「この電車は見送るよ。」
「高藤さんの帰る方面の電車が来るのを待つよ。」
僕も笑顔で言った。
「えっ、乗らなくていいんですか?」
「うん、久しぶりに会ったから、もうちょっと話がしたいから・・・。」