媚薬と私
由紀子とは、これまで仕事の事でメールのやりとりはした事があるが、プライベートの事でのメールは一度も無かった。


僕は由紀子と、初めてプライベートでメールをしようと考えていた。


昨日の今日でメールをするのは、余裕が無いと思われるので、少し間をあけよう・・・。


でも、早くメールしたいな・・・。


いや、ここは我慢だ!!


僕はそう思いながら、由紀子の事を考えていた。



相手を好きになったら、負けだ。


好きな相手に対して、ちょっとした事でも一喜一憂してしまう。


例えば、メールの返信に関してもそうだ。


メールを送ったが、相手から返信が来ない・・・。


メールを見ると、しっかりと既読になっているのに、中々返事が来ない。


心、穏やかで無くなってしまう・・・。


好きな相手が、他の男性と仲良くしている。


これまた、心が穏やかで無くなってしまう・・・。


もちろん、これの逆もあり、良い事も多い。


しかし、一喜一憂してしまう事に疲れてしまうのも事実だ。


特に、うまく行っている時はいいが、うまく行かない時は最悪だ。


実はうまく行っている時、行かない時とは、自分自身の気持ちの受け止め方にもあるのだ。


例えば、相手からメールの返信が遅くても、相手は何とも思っていない事が多い。


しかしこちらは、返信が早い、遅いを気にしてしまう。


気にするのは、相手の事を好きだからだ!


好きで無かったら、どうでもいい事なのだ。


だから、好きになったら負けなのだ。


こういった観点から、僕はもう恋愛はしたくないと思っていた。


既婚なのだから、当たり前だが・・・。


しかし恋愛初期の、トキメキは味わいたい。


付き合いたてのカップルの、仲の良い事。


燃え上がっている最中なので、アツアツだ。


そういった体験を、もう一度してみたいのも事実だ。


独身の時と違って、妻と子供という心の安定はある。


妻以外の相手と付き合って、ダメならそれまで・・。


既婚男性には、そういった心の余裕がある。


僕は余裕を持って、由紀子に接していこうと考え始めた。


由紀子との再会は、僕にとって「出会い」となっていた。
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