媚薬と私
「こんにちは。」
「忙しい? 食事に行こうよ!」
僕は由紀子に食事の誘いのメールをした。
さて、どうなるか・・・・?
半年前まで、一緒に仕事をしていた、20歳も離れた女の子と食事に行く・・・。
なんか、ワクワクした。
ただ、由紀子とは元々相性はいいので、会うのも気が楽だ。
由紀子自身も、そう思っているに違いない。
当たり前だが、僕を男として見ていないだろう・・。
それが分かっているから、僕も彼女を女として見ないようにしている。
20代後半に仲良くなった尚子という女友達は、女慣れしている男が好きだと言った。
何故ならば、女慣れしていない男は、勘違いする事が多いと言う。
「私は単に、友達として接したいのに、私の事を ”オンナ ”として見るんだよね。」
「わたしが飲みに誘ったら、脈ありだと勘違いしてさー・・・。」
「好きだとか告白されたり、手をつなごうとしてきたり・・・。」
「友達として、付き合いたかったのに・・・。」
「女慣れしている男は、女の扱い方が上手いし、経験もあるから、すぐに勘違いしないんだよ。」
尚子は、このように言っていた。
僕は尚子の話しから、女心を知るようになった。
尚子は、美人で可愛かった。
尚子から飲みに誘われれば、確かに期待してしまう。
かくいう僕も、尚子から飲みに誘われて、そう思った一人だ。
だけど尚子の方から、先制攻撃してきた。
尚子は僕の事を、男として見ていないのだ・・・。
でも尚子の話しは、随分と参考になったものだ。
だから、今回、由紀子も当然のように、僕を男として見ていない。
そして僕も、由紀子を女として見ない事が、うまくいく秘訣だと思う・・。
そもそも僕は、既婚者だ。
しかも、由紀子より20歳も年上で、彼女から見たら、僕はおじさんだ!
女として見たら、彼女からキモい!と思われるだろう。
由紀子の返信は、相変わらず遅い。
返信が遅い事で、僕への対応が分かるようなものだ。
由紀子の返事が来たのは、やはり次の日の朝だった。