最後の恋
私の心の内とは裏腹に、微笑みを浮かべるとこちらに大きく手を振る紫乃。


隣を歩く彼氏もそれに気づき、紫乃の視線の先を辿るようにこちらを振り返った。


彼は紫乃に手を振り返す私を一瞬その視界に映した後、何事もなかったかのように視線をまたすぐに前に戻した。


仲良く歩く二人の姿が校門を出るとすぐに見えなくなった。


それから暫くして私も誰もいなくなった教室を後にした。


そうー一私にとって一ノ瀬君は友達の彼氏。


そして一ノ瀬君にとって私は、付き合っている彼女(紫乃)の友達。


それ以上にはなれないし、初めから望んでもいない。

< 10 / 277 >

この作品をシェア

pagetop