最後の恋
彼とはそれからも、週末になると夕飯を一緒に食べる機会が増えていった。


それは、ただ単に接待などのお供でという時もあったけど、接待がないときはプライベートで２人で食事に行ったり、飲みに行ったり。


そして、それはあくまでも元クラスメイトのお友達として…。


私は自分にそう言い聞かせていた。


彼が本社に来てから早1ヶ月が過ぎていた。


社内での彼の人気はとどまることなく、すれ違う女子社員のほとんどが彼を見ると頬をピンク色に染めウットリとした表情を見せる。


彼は、それには気付いてるのか気付いていないのか私が言った一言に彼から戻って来た答えはこんな言葉だった。


「…俺、そんなにモテないよ。松野さんだって知ってるでしょ？」

「そんなわけないでしょ。今日だって社内の女子達がどんな目で一ノ瀬君を見てたか分からないの？ついでに言えば私に突き刺さる視線は相当痛いんだから。それに、高校の時だって紫乃がいたから皆…」


そこまで言ってハッとした……


彼女が黙って居なくなってから、一度も口にしたことがなかった彼女の名前を…言ってしまったことに。
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