最後の恋
「皆が、何?」


私たちの間に流れる重い空気をサラッと打ち消すように、彼がそう続きを促した。


彼の真意を確かめるように、隣に座る彼を見るとそこには穏やかな優しい目で私を見てる彼がいて何故だか分からないけど胸がギュッと締め付けられた。


今、この瞬間、彼は誰のことを思っているんだろう。


紫乃のことを思い出してる…?


2人が今、どんな関係なのかが一切分からないから余計に苦しいのだろうか。


そこまで思い至ったとき、自分の中である事実にぶち当たった。


………………苦し…いの……私…?


自分の中で気付いてしまったその感情を誤魔化すように、目の前のグラスの中身を一気に喉に流し込んだ。


空になったグラスを静かに置くと、不意に目があった少し距離のあるマスターに同じお酒を頼んだ。
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