最後の恋
そして、専用のパソコンで本のバーコードを読み取るだけの簡単な作業を行う。


「では1週間の貸し出しになります。返却の際はこちらの返却カウンターまでよろしくお願いします。」


いつものお決まりのセリフも、どうにか噛まずに最後まで言えた。


それは、日頃の練習の賜物以外の何物でもない。


あの日の失敗から、私は毎晩鏡の前でアナウンサーを目指しているのか?と思うほどセリフの練習を重ねていた。


だけどあまりの緊張から早口になり、今日もまた息継ぎさえ出来なかった。


彼以外の人の前では完璧なのに。


彼を前にすると、いつもどこか冷静ではいられなくなる。
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