最後の恋
私は、今出たばかりのカフェにもう一度戻ってきていた。


タケには久しぶりに再会した友人だから心配しなくても大丈夫という事と明日の新幹線の時間を確認して、とりあえず今夜はそのままロビーで別れた。


「…元気、だった?」


紫乃が、重たい口を開いた。


「…うん、紫乃も元気そうだね。」

「ま、色々あったけど…今はそれなりに元気でやってる。」

「そう…それは良かった。」


そう言ったっきり後の言葉が続かない…。


聞きたいことも言いたいこともいっぱいあったはずなのに、いざこうして会ってしまったら何も言えないし何も聞けなかった。


私たちの間には、間違いなく空白の10年という時間が流れていたのだと改めて感じた。


私と彼女の間に流れたその時間は、決して短くはなく長過ぎたのだと思う。


そして、お互いに元気でやってるならそれでいいんじゃないか…


目の前にいる彼女を見て自然とそんな気持ちになっていた。
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