最後の恋
タケがとってくれた部屋に入った瞬間、閉じられたドアを背後に私は大きなため息を吐き出した。


そして、ヒール高めのパンプスとストッキングをその場で脱いだ。


窮屈に締め付けられていた足が解放され、やっと全身で呼吸ができた気がした。


1人で眠るには贅沢すぎる大きなベッドの脇を通り、スカイツリーの見える大きな窓の手前に置かれたソファに沈み込んだ。


なんだか、この短時間の間に色々なことがありすぎた。


こんな高級ホテルの部屋のソファに足を投げ出し座っている自分が客観的に見ておかしくなった。


タケと久しぶりの再会で楽しいお酒を飲んでいたはずなのに、どうしてこうなったのか…。


そもそも、ストーカーなのか何なのか得体の知れないあの視線を感じていなければ今こうしてここにいる事も、紫乃と再会する事もなかったはずなのに。


隣に放り出すように無造作に置かれたバックの中からくぐもったようなバイブ音が聞こえ、しばらくするとピタリと鳴り止んだ。


メッセージでも受け取った通知だろうか。
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