最後の恋
そんな私に気づいのか、バツが悪そうな声がすぐ真上から聞こえた。


「…あ、えっと笑ってごめん。今のは決してバカにしたとかじゃなくて…」

「…いえ。気にしてません…から」

「ちょっと可愛過ぎて笑っただけだから、本当にごめん。」

「大、丈夫です…」


彼の口から飛び出した可愛いなんてセリフに深い意味なんてない。


そんな事分かっているのに、私の心臓は必要以上に飛び跳ねた。


業務的な会話以外で、初めて話した個人的と言っていいのか分からない会話がコレだった。


その日から、彼は毎週金曜のお昼休みになると図書室に現れた。


金曜、お昼休みの私のカウンター当番の時間が私の一番緊張する、幸せな時間になった。


誰にも邪魔をされることのない時間に。
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