最後の恋
彼が帰ってきても、きっと私は彼女が訪ねてきたことを言えないだろう。


今はもう何も考えたくはなかった。


とりあえず…食べよう……


立ち上がり、途中だった晩御飯に箸を付け、ただ無心に口に運んでいた。


さっきまでは味気なくてもまだ美味しいと感じる事は出来たのに、今はもう味なんて感じなかった。


時計の針はいつの間にか9時を指そうとしていた。


彼を待っていようと思ったけど、先にお風呂に入ることにした。


いつもなら彼と同じ石鹸を使い彼と同じ匂いに包まれると少しだけ心が落ち着いたのに、今日はそれだけで不安が消えるはずがなかった。


彼はもし私が聞いたら本当の事を答えてくれるだろうか?


あの頃は聞けなかったけど、今は聞いてもいいのだろうか?
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